夜光杯雑記帳

小ネタが輝く、万華鏡のようなブログを目指します

【常用漢字表】漢検8級の漢字/「終わり」の「始まり」劇場

「終わりの始まり」という言葉を時折見聞きします。この言葉、気の利いた言い回しと評価すべきなのかもしれませんが、何となく違和感を感じていました。
英語との比較で考えてみます。「ジーニアス英和辞典(第6版)」では、「the beginning of the end」の訳語が「終わりの始まり」となっています。え、英語では有りなのですね。話者が「end」と認識する期間には幅があり、その「end」期間の開始点が「beginning」という感じでしょうか。そのように考えると、違和感の原因が見えてきました。「終わり」の幅をどう考えるかの違いなのですね。
このブログおなじみの「デジタル大辞泉小学館)」 では、「終わり」は「物事が終わること。また、終わろうとするところ。最後。しまい。果て。」などと解説されており、ある程度の幅があるというよりは、「点」に近いと感じたのですが、いかがでしょうか。
政府提供の「e-GOV法令検索」を利用し、法律における使用例を見ますと、「終わり」を幅のあるものとして扱っている、という感じのものは見当たりませんでした。時間的観点から「終期」という言葉が使われたりもしますが、これは、ある程度の幅を持つ「期間」というよりも、場所的観点から「終点」と言うのと似た感じです。ということで、少なくとも法律の使用例では「終わり」には幅がない、よって「終わり」には幅がないと考えるほうが妥当である、と言い切ってしまいたいと思います。
「終わりの始まり」という表現の背景には、物事は何らかの段階を踏んで進行するのだという意識があるのだろうと思います。最終幕とか最終楽章を「終わり」と表現する感じですね。何となく芝居じみた表現のような気がする、というのが違和感の正体なのでした。
というわけで、「終わりの始まり」ではなく、「終わりに近づく」とか「終末期の始まり」とか言っていただければ気分的に助かります。