今回は、「重複」をどう読むかという問題です。「じゅうふく」は間違いであるとの意見もありますが、果たして本当にそうなのか考えていきます。まず、常用漢字表では、「重」は「ジュウ」とも「チョウ」とも読めますから、「重複」を「じゅうふく」と読むべきでない根拠はありません。このブログおなじみの「デジタル大辞泉（小学館）」で「じゅうふく（重複）」を見ると、「ちょうふく（重複）」に同じと解説しています。「じゅうふく」が間違いである旨の記述はありません。広辞苑と大辞林では、「ちょうふく」に誘導されますが、「じゅうふく」が間違いである旨の記述はありません。「コトバンク」による「精選版日本国語大辞典」では、それぞれ解説があり、「じゅうふく」が間違いである旨の記述はありません。ここまで来ると、大体の見当はつくだろうと思います。「じゅうふく」も間違いではないと考えるほうが自然でしょう。
「じゅうふく」間違い派の根拠としては、歴史的には「ちょうふく」のほうが早いとか、NHKでは「ちょうふく」と読むといったものがあります。「ちょうふく」のほうが早いだろうというのは「コトバンク」の解説でも推測できますが、だからといって現時点で「ちょうふく」が間違いという根拠にはならないでしょう。慣例読みだと言って間違いと断じるのは、相当数の感性を軽視することです。NHKでは「ちょうふく」と読むらしいことについては、まあ、アナウンサーが「ちょうふく」と読んだり「じゅうふく」と読んだりすると視聴者から問い合わせが来て大変なんだろうと思います。御苦労なことです。だからといって「ちょうふく」を間違いとする根拠になるかどうかは大いに疑問です。
